「人生がうまくいっていないような気がする」
「どこで歯車が狂ったのだろう……」
「昔はよかったんだけどな……」
日々、こんなモヤモヤを抱えることも少なくありませんよね。
とくにこれまでの人生でステップアップしていた実感がある人ほど、「そうではなくなった」と感じたとき、立ち直る方法がわからない人も多いかもしれません。
こんなとき、私たちはどうすれば良いのでしょうか?
真宗大谷派の僧侶で、産業カウンセラーをつとめる三橋尚伸さんに「人生うまくいかないな……」と感じる人のために、アドバイスをいただきました。
この記事を読んでいただければ、あなたのモヤモヤは減るでしょう。
![]() 三橋 尚伸(みつはし しょうしん) |
なぜ人生がうまくいかないと感じるのでしょうか?
人生がうまくいかないと我々が感じてしまう理由は4つあると言います。
|
理由1.うまくいって当たり前、と思っている
立ち位置が間違っていませんか?
うまくいって当たり前、と思って生きてきたのかもしれませんが、実は逆なのです。
様々な縁が繫がった結果、たまたま自分の都合に合うような日々が続いていただけなのであって、実は本当は、いつうまくいかない状況に陥っても不思議ではなかったのです。
この世はあなたの都合通りにはなっていない、ということを知らないのではないでしょうか。
努力次第で都合通りの生き方になると、思いこんではいませんか?
私たちはそのような考えを親から、また学校で教育されてきたからなのですが、それは真実ではなく、妄想です。
努力は効果がある時もあるけれど、努力に見合った結果を出せないことも多くありますね。
例えば、大きな災害に遭うなどということは、私達の努力を超えたところで起こりますね。
日ごろどれだけ良く生きようと努力し、我慢して頑張ってきたとしても、遭うべき時には遭ってしまう。これが真実なのです。
恋愛や人間関係なども同様で、努力しても良き人に出会えるか、自分にとって良くない人に出会ってしまうかも、本当はわからなかったのではないでしょうか?
理由2.楽な状況は、自分の思いに関係なく変わってしまう
仏教の基本的な教えでは、「一切皆苦」。
この世の全ては苦しみであると言われています。
例えば、たまに都合通りにことが運び、この世は案外楽に生きられると感じる時があったとしても、残念ながら「諸行無常」なんですね。
全ての物・事柄・事象は常に変わり、同じ状態を継続できないと言われています。
自分の都合に合った楽な状況は、自分の思いに関係なく変わってしまうということなのです。
心理的には、感情には波があるので、誰でも低調な波の時には否定的な感覚が強まります。
うまくいかないと落ち込んでいる時があるのは、とても自然なことです。
理由3.比較することは「煩悩」の一つ
恐らくいつもより、他者や世間と比較することが多くなっていませんか?
比較は煩悩の一つで、「慢」と言います。
慢は必ず分別して、この状況は良いとか悪いとか、勝ちであるとか負けであるという評価につながり、この評価があなた自身を攻撃しているのです。
私達人間は、6つの煩悩でできています。
その一番初めが「貪欲」ですから、常に欲に照らしてはうまくいっている、うまくいっていないと苦しむわけです。
理由4.自己認識や価値観が偏っている
自己認識や価値観がかなり偏っていませんか?
「○○すべき」「○○ねばならない」「○○に間違いない」が強すぎませんか?
これらの価値観の多くは、親や親的な立場の人から無意識に受け入れたもので、いつのまにか絶対視しているので、なかなか手放せません。
自分の人生全体を含む自己評価の低さは、やはり親や他者から知らず知らずのうちに低い評価の言葉を浴び、否定的な表情や態度を浴びてきたからなのです。
自己認識・自己評価が正しいのか、自分が絶対視して疑わずにきた価値観は偏っていないかを、少し距離をとってじっくり見てみませんか?
あなたは誰かの代理人ではないのです。
「人生うまくいかない」と感じるときにやってみること
「人生うまくいかないな…」と感じるとき、以下のことを試してみると良いと三橋さんは語ります。
|
やってみること1.自分で自分を褒めてあげる
良くも悪くも、落ち込みや否定の波は変化するという事を思い出してください。
否定的な感覚が強く自己評価が低い人は、親や他者からあまり褒められていないということが考えられますので、まずは自分で自分を誉めてあげてください。
誉められ慣れることも必要ですよ。
やってみること2.自分以外の誰かを褒めてあげる
でも慣れていないから難しいですね?
そんな時には、少し恥ずかしいかもしれないけれど、まず他者・誰かを誉めてあげてください。
言葉で誉めることが不得意で難しいのであれば、非言語を使うのです。
非言語には表情や態度があり、ニコっと笑顔をしたり、指でOKマークを作って相手に届けると、それは肯定の合図となり、言葉で誉めるのと同様のメッセージになります。
これは練習しないとなかなかできない人が多いのですが、試せそうな時をねらって、一度試してみてください。
やってみること3.自分にご褒美をあげる
誉めるのが苦手な人は、自分にご褒美をあげるのも良い方法です。
大金を使ったり多くの時間を使うのではなく、小さなご褒美を考えましょう。
例えばコーヒーが好きな人がいたとして、いつもは安価なチェーン店で慌ただしくコーヒーを飲んでいるとしたら、たまには自分好みの高級なカップを選べるような店で、ゆっくりとコーヒーを飲むだけの時間を自分にあげるのです。
花が好きな人なら、自分だけのために自分の大好きな花を購入して、ゆったりと見ているだけの時間をあげるのです。
どうしていいかわからないときは湯船に浸かる
それでもどうしたら良いのかわからない時には、湯船に浸かりましょう。
シャワーではダメですよ。
これは胎児に還る体験をすることなのです。
胎児は温かい羊水に浸かってユラユラ漂っています。
その外側には柔らかい絨毛があり、さらには強固な子宮という筋肉が守っている「絶対の安全」が約束された環境にいます。
これを再体験するのが有効なのです。
この時は、お風呂で身体を洗う等、余計な仕事をせずにゆったりと浸かるだけです。胎児は仕事はしませんからね。
知らず知らずのうちに傷つき疲れている自分を、安全だった時の場所へ移動させるだけです。
胎児還りと言っても良いかもしれませんね。
やってみること4.「やるべきこと」ではなく、「やりたいこと」から手をつける
「やるべきこと」から手を付けるのではなく、「やりたいこと」から手をつけると、少し楽になります。
選び方の基準を、「~べき」から「~したい」に変えてみるのです。
このように変える時、それまでとは違う選びをするので、不安を感じて躊躇するかもしれませんが、
あまり影響のないケースで試してみてください。
たとえば、掃除をしなければならないと思っているとき、本当にしたいことは何かと考えて、それが読書だとしたら、読書を優先させるのです。
まずは自分を満足させてあげるということですね。
日ごろから持っている、自分の価値観を見直しましょう。
やってみること5.身体の声に正直になる
何十年か生きていると、いつのまにか「○○かもしれない」→「○○だと思う」→「○○に違いない」→「絶対に○○」だ、と変わってしまい、そもそも想像・妄想だったはずのことを、「絶対」だと勘違いしてしまうのです。
心ではなく、身体の声に正直になりましょう。
身体は何と言っていますか?
何もかもうまくいかないと落ち込み、ウツウツとしているあなたに、立ち止まってほしいと言っていたり、少し休ませてほしいと言っているかもしれません。
もっと自分を大事にしてほしいと言っていたり、もっと自分自身を愛しても良いんだと伝えたがっているかもしれませんね。
心は自分に嘘をつきますが、身体は正直に反応していますよ。
「わかっちゃいるけど、止められない」。
きっとどうすれば良いかは、とっくにわかっているのかもしれませんね。
でもできない自分がいる。これも自分なんですね。
どのような自分であっても、大事にしてあげてください。
あなたは、他の誰とも違うあなたであって、たった一人しかいない大事な存在なのですから。
やってみること6.人間ではない「大きな存在」に話しかける
私は僧侶ですから、あまりに納得できないことなどがあってつらくなった時には、阿弥陀仏という仏に向かって、愚痴や怒りをぶつけます。
時には泣きながらのこともあります。
阿弥陀仏を罵倒している時さえあります。「あなたはいったい何をしているんだ。ちっとも私を助けてくれないじゃないか」と。
あなたが信じられる仏や神がいるのなら、話を聴いてもらってください。
人間ではない大きな存在は、黙ってあなたの話を受け入れ、抱いてくださると思いますよ。
「人生うまくいかない」と感じるときにしてはいけないこと
「人生うまくいかないな……」
「将来を考えるだけで不安になってしまうな……」
そんなとき我々は以下の
避けること1.大きな決断をしてしまう
大きな決断をしてはいけません。
それは通常レベルを超えた否定的な思考が、間違った決断を導いてしまうからです。
人間は焦りが強まると、動いてしまいます。
決断を急いでしまうのも、この強い焦燥感のしわざです。
本当はずっしりと腰を下ろして動かずにいることが必要なのですが、これができなくなります。
それでも、可能な限り焦りの波をしのぎましょう。
しのぐという言葉は、真向かうのではなく、戦うのでもなく、横目で眺めながら通り過ぎるのを待つ時間という感じになります。
問題から心理的な距離をとるように意識して、決断を後回しにするのです。
避けること2.わざと明るい場所や、大勢で騒ぐ場所に行く
モヤモヤを晴らそうと、わざと明るい場所に行ったり、大勢で騒ぐ場所には行かないでください。
同じく「ハレの席」、例えば結婚式等には本当は行かない方が良いのです。
今以上に孤立している感覚が深まったり、否定的になってしまい、より傷ついてしまう可能性が高い
からです。
合コンに参加するのも、笑いを提供する場所に行くのもお勧めできません。
無意識に周りの人々のテンションに合わせて、余計に疲れてしまうからです。
終わった後の空虚な気持ちは、もしかしたら今の落ち込みよりつらいかもしれません。
避けること3.自分と他者を比較してしまう
今以上に他者や世間と比較してはいけません。
でも、やってしまうのですね。
「慢」比較は人間の基本ですから、無くすのは無理でしょう。
完全に無くすことはできなくても、比較している自分に気付くだけでも、少し慢は軽くなります。
一度、じっくり自分の心の中を歩いてみてください。あなたは誰と比較していますか?
いつも無意識のうちに気にしている人は、誰ですか?
避けること4.何かに依存してしまう
何かに依存しても人生はうまくいきません。
たとえば仕事依存、アルコール依存、ギャンブル依存、買い物依存・セックス依存、タバコやコーヒー等の嗜好品依存が強くなっていると思いますが、依存しても解決にはなりません。
これは「しがみつき」という状態で、何かにしがみつくことによって、必死に自分を立てようとしている行為です。
しかし様々な依存の結果、あなたは身体を壊すかもしれないし、お金の問題を起こすかもしれないし、男女間で問題になるかもしれないし、仕事を失う原因になってしまう可能性もでてきます。
状況の悪さで眠れなくなっている人の多くは、酒類を飲むことで眠れると思い込んでいるようですが、飲酒は眠りの質を悪くするばかりではなく、人生そのものを余計に壊してしまう可能性を秘めています。
最後に
最後に、どのような人生もあなたの大事な人生です。
そこには比較ではない「絶対の価値」があるのですから、どうか大事にしてください。
コメント